異痛症・アロディニアの原因と鍼灸での治し方を解説
異痛症・アロディニアの主な症状には、次のようなものがあります。
- 上半身がヒリヒリ・チクチクする
- 手足がピリピリ・チクチクする
- 頭部や首がヒリヒリ・ピリピリする
- 触れただけでヒリヒリ・ビリビリする
- お腹や背中がヒリヒリ・チクチクする
- 肩や腰に筋肉痛の様な痛みがある
- 腹部や背中、上半身に灼熱感がある
- 体中がヒリヒリ・チクチクして眠れない
- ストレスや不安が強くなると胸から腕がチクチクする違和感が出る
- 病院では原因不明の手足のシビレがある
- 風呂上りに体や首がヒリヒリする
- 汗をかくと腕や首が赤くなり痛い
上記のような症状がある方は異痛症・アロディニアかもしれません。
その原因や適切な対処法、注意点、治す為のポイントを解説していきます。
異痛症・アロディニアとは
アロディニア、別名「異痛症」は通常、痛みを感じない触覚刺激に対しても痛みを感じてしまう感覚異常のことです。
偏頭痛や帯状疱疹、糖尿病性神経障害などに併発して起こる事が多いです。ですが、その様な痛みの出る疾患の既往が無くても発症する事も多々あります。例えば、ワイシャツの襟が首に触れただけで「ビリッ」とした痛みを感じたり、シャワーを浴びた後に上半身がヒリヒリしたりします。
アロディニアが起こる仕組みはハッキリと解明されたわけではありませんが、痛覚を抑制する機能(下行性痛覚抑制系)が働かなくなることで、痛みを感じる閾値(ボーダーライン)が低下してしまい、少しの刺激で痛みを感じるようになってしまいます。
閾値とは
閾値(いきち)とは「感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの(物理)量」の事です。痛みを感じる刺激量の閾値(ボーダーライン)が50レベルだとした場合、30や40の刺激量では痛みとして認識しないが、50を越えた途端に痛みとして認識します。
仮に痛覚の閾値が20になった場合、今まで痛みとして認識しなかったような30の刺激でも痛みとして認識するようになってしまいます。その痛覚の閾値のコントロールをしているのが、脳や脊髄が関わる、下行性痛覚抑制系という痛覚を抑制する機能です。
異痛症・アロディニアの原因
神経障害性疼痛や線維筋痛症、偏頭痛などの痛みが発生する疾患が原因となる場合
痛みを伴う疾患があると、その痛みを脳が学習していきます。それが長期間に及ぶと、患部に痛みが無いのにも関わらず、痛みを感じるという事が起きてきます。それを中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)と言います。
そして、鎮痛薬などの長期服用を繰り返している人ほどなりやすい傾向にあります。鎮痛薬などで、患部から脳への痛みの神経回路を遮断し、痛みを感じないようにしたとしても、痛みに対する脳の興奮は治まっていない為、痛みを感じていると脳は学習し続けてしまうのです。その結果、より痛みを敏感に感じ取るようになってしまいます。
ストレスによる自律神経の乱れが原因となる場合
身体的なストレス
身体や脳の疲労や、全身のコリ、遺伝や性別によるバイタリティの差などを指します。
身体や脳に疲労が蓄積されることで、身体機能が低下したり、脳の神経回路が常時、惰性で活動状態になるので、オンとオフの切り替えが上手くいかず、自律神経も乱れていきます。
全身のコリ(特に背中と首のコリ)がある事で、常に体が活動状態だと脳が勘違いを起こし、自律神経を乱します。
詳しい解説は下記を参照↓
脳の興奮と自律神経失調症に鍼灸が効く理由
神経解放鍼灸テクニックとは
そして、男性と女性では筋肉量や脳の作りが違うので、できる仕事も違いますし、疲れやすさも人によって変わってきます。
心理的なストレス
心理的なストレスが原因の場合です。日々マルチタスクに追われていたり、リフレッシュできる環境が無い場合、あとは認知の歪みが起きている場合に心理的なストレスが蓄積されます。
認知とは、物事をどう認識するかという事で、それが歪んでいるとストレスを感じるという事です。
よくある例えですが、コップに半分まで水が入っているのを見て、「半分しか水が入っていない」とネガティブに捉えるか、「半分も水が入っている」とポジティブに捉えるかで気持ちは変わります。
つまり、現実で起きている事実は同じでも、捉え方によってストレスの感じ方が変わるという事です。認知の歪み、白黒思考、完璧主義、べき思考などと言いますが、今まで生きてきた価値観が正しい、常識だと思い込み、それに当てはまらない事象が起こるとストレスを感じるという事が起きてきます。「〇〇して当たり前」「〇〇はすべきだ」「必ず〇〇でなければならない」など、その人特有の考え方のクセがあると、それが原因でストレスを感じ、不調に陥るという事が多くあります。
環境的なストレス
生活習慣、職場環境、家庭環境、人間関係に由来するストレスです。不規則な生活習慣や、仕事が忙しく、睡眠時間の確保ができないなど、環境がもたらすストレスがコレにあたります。
目の前の課題、問題をどう解決していくか、というのが大切になってきます。感情に支配されず、論理的に物事を考える問題解決能力が必要となります。
「嫌われるかもしれないから話せない」「休みたいけど言えない」など本来解決しなければならない問題があるにも関わらず、感情に支配され、問題を先送りにしてしまい、ストレスが溜まり続けるという事が多く起こります。
異痛症・アロディニアを治すうえで注意すべきポイント
肌への刺激を極力避ける
肌への刺激が異痛症・アロディニアの症状を悪化させる要因となります。
具体的には、紫外線、温熱刺激、寒冷刺激、汗をかく、熱いシャワー、金属類に触れる、極端な寒暖差などです。痛覚だけでなく、あらゆる感覚に敏感になりますので、肌の刺激になるようなことは避けましょう。
肌の保湿
皮膚が乾燥すると角質が剥がれ、衣服などに引っかかり痛みを引き起こす原因となります。保湿をすることで肌の柔軟性も保てるので、外からの刺激に柔軟に対応できるようになります。
化学繊維ではなく、綿にする
化学繊維の衣服だと肌を刺激する要因となります。なるべく肌に優しい生地を選び肌に刺激が加わらないようにしましょう。汗をかいた時に透湿性に優れた素材でないと熱がこもり、汗をかき、症状を悪化させる要因となります。
どんな治療法があるか
生活習慣の改善
前述したように不規則な生活習慣を送ることで自律神経は乱れてきます。具体的には睡眠習慣、食事習慣です。社会環境がいくら発展してもヒトは生物学的には変わりません。日が昇っている時に活動し、日が沈んだら眠る、という事です。24時前には寝て、7時間睡眠ができると理想とされています。
「夜更かししても大丈夫」という人もいると思います。ですが、今この記事を見ている人は、大丈夫でないから、異痛症・アロディニアになっているという事です。
食事の量やリズムを一定にすることで自律神経も整ってきますので、暴飲暴食をしたり、1日1食にしてしまうと、そのリズムが乱れてきます。
環境の改善
職場の労働環境では仕事が忙しく、睡眠時間が確保できないのであれば、業務内容を見直したり、場合によっては休職ををして心身を休息させる必要があります。家庭環境では両親の介護の問題や、家事育児の問題があります。頼れる人がいない場合は福祉のサービスを適切に利用し、負担を軽減するなどの方法が必要になります。
薬物療法
西洋医学の病院では異痛症・アロディニアに対して薬物療法が中心になります。ですが、根本的に治すものではなく、対処療法として処方されます。主に抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などが処方され、一時的に心身の緊張を和らげたり、脳の神経伝達物質の量を調整して症状を和らげていきます。
効果を実感しやすいというメリットがありますが、副作用や、依存性、長期服用による離脱症状などのリスクも存在します。それらを理解した上で、服用期間などを医師と相談し、正しく服用する必要があります。
精神療法・カウンセリング
認知療法や認知行動療法がコレにあたります。
認知療法は前述した自分の主観を取り除き、客観的で論理的な思考を身に付ける訓練です。「認知の歪み」を修正する事でストレスを感じにくく、問題を解決する能力を養います。
認知行動療法は、認知の歪みにより不安やストレスを感じるのであれば、それに繋がる行動をしないようにして感情をコントロールする方法です。「嫌な思い出がある場所に行くと不安を感じる」のであれば、その場所に行かないという行動をすることで認知をコントロールするという事です。
ただ、これらを実践するには、そもそもの論理的な思考力が必要になったり「そんなのは無理」という認知の歪みがあるとなかなか上手くいきません。
鍼灸整体
当院では鍼灸施術を行っておりますが、自律神経失調症に対して非常に効果的な治療法です。
副作用がない施術方法で、人に本来備わっている「元の正常な状態に戻す力(ホメオスタシス)」の機能を正常に働かせる事ができます。
心臓の鼓動が速くなれば、遅くして元に戻したり、血圧が上がれば、下げて元に戻したり、消化が終わったら消化活動を終わらせたり、その様なバランスを保っているのが自律神経で、それらの機能を総称してホメオスタシス(恒常性の維持)と言います。
その機能が破綻する事が異痛症・アロディニアの正体ですので、その機能を元に戻すことができるのが鍼灸施術です。
異痛症・アロディニアに対する鍼灸の効果
上脊髄反射・下行性痛覚抑制系の賦活化
手足末端への鍼灸刺激は脳幹に伝わり副交感神経を活発にさせる働きがあります。又、下行性痛覚抑制系に作用する事で痛みが伝わるのをブロックし、鎮痛効果をもたらします。つまり、手足末端の鍼灸刺激を行うことで「体がリラックスし痛みに強い体が作れる」という事になります。
手足に重要なツボが集中している理由はその様な事からです。
対処療法的に痛みのある部位、筋肉にだけ刺す施術が多くの鍼灸院、鍼灸整骨院だと思いますが、身体の機能を根本的に変えていくには手足の刺激は必須と言えます。
副交感神経が優位に働くことで、内臓機能が亢進しますが、その効果が高いツボとして、足三里というツボがあります。足三里は胃腸の機能を整えるツボとして有名ですが、西洋医学的な神経反射としても内臓の機能を整える事が分かってきました。つまり、手足の体表面の鍼灸刺激が内臓のホメオスタシスの機能を整えているという事です。
交感神経を優位にしている身体的な要因を取り除く
姿勢反射というものがあります。例えば電車で立っている時に寝落ちしてしまい、膝がカクンと曲がった経験はないでしょうか。寝落ちしたままそのまま床に倒れて眠る人はなかなかいません。倒れないのには理由があり、重力に負けて膝が曲がった際にモモの筋肉が急に筋肉が引き延ばされた事を感知し、このままでは倒れてしまうと筋肉が無意識に収縮するのです。これは腱反射、脊髄反射などと言いますが、それと同時に首や頭の位置も急激に変化するので、内耳の前庭器体がこのままでは倒れてしまうと感知し、姿勢を保とうと背中の筋肉を収縮させます。
このような複雑な神経反射を行い私たちは日々生活しているのです。そして、そのような反射に使われる筋肉には筋肉の長さを検知する筋紡錘(きんぼうすい)という受容器が多数存在し、その筋紡錘の量が多ければ多いほど凝りやすい、硬くなりやすい部位という事になります。
代表的な部位で固有背筋という背中の筋肉があります。これは抗重力筋と言い、上体を起こしている時に働く筋肉で、前述した姿勢反射に大きく関わります。よって凝りやすい筋肉なのですが、これらは交感神経線維と密接に関わっています。
交感神経というのは脊柱の横を首から腰まで通っているのですが、それらの交感神経と固有背筋を支配している神経は吻合し(合わさり)脊髄へと入力されていきます。つまり、交感神経が支配している内臓の感覚や運動と固有背筋の感覚や運動が同調(シンクロ)するという事です。
そして、固有背筋が収縮し続ける状態(コリ)があると交感神経も興奮を続け内臓機能に異常が生じます。なので、東洋医学の臓器に繋がるツボは背中に集中しており、それらを施術する事で内臓機能を調整していたという事です。先人たちはすごいですね。
症状を出にくくする事ができる
異痛症・アロディニアの症状には波が存在します。「昨日は大丈夫だったけど今日は辛い」「さっきまで大丈夫だったのに、また急に出てきた」「今週は本当にしんどい」など、症状の波があります。
異痛症・アロディニアの症状が出る要因は様々ですが、ストレスや疲労が一定以上蓄積されると症状が出現するというのが異痛症・アロディニアです。つまり、仕事や家事で疲れた時は症状が出やすくなるし、ストレスを感じたり、嫌なことがあれば症状が出てくるという事です。そして、一度症状が出現すると、症状が出現するボーダーライン(閾値)が下がってしまうのが問題です。
例えば、疲労やストレスのボーダーライン(閾値)が100で、100のストレスや疲労が溜まったらピリピリやビリビリ、灼熱感などの症状が出る人がいたとします。一度100を越え、症状が出ると、次はそのボーダーライン(閾値)が80まで下がります。また症状が出ると60、40と、どんどん下がってきてしまいます。つまり「今までは週5日働けてたけど、不調になってから4日しか働けない、3日しか働けない」という事が起きてきます。「前まで夏場でも外出できてたけど、今は暑い所に行くとすぐに体調が悪くなる」など、自らの行動に制限がかかり、やりたいことができなくなり、行動範囲が狭くなっていき、自信が無くなってきてしまいます。
鍼灸施術はそれらのボーダーライン(閾値)を上げていく事ができるのです。
なので「外出できるようになった」「今週は症状が出なかった」など、以前は症状が出ていた程の体へのストレス・疲労でも、症状が出なくなるという事が起きてきます。
異痛症・アロディニアが治ったと判断するポイント
治ったと判断するタイミングは「2週間、症状について忘れていた」という事が起きたら治ったと判断して良いでしょう。
前述したように、ホメオスタシス(恒常性の維持)の破綻が自律神経失調症の正体です。つまり、生活習慣の乱れやストレスなどで、なるべくしてなっている、正常な生体反応なのです。
という事は、本来であれば「治った」という概念でも無くなるのです。病気ではないのですから。
お化け屋敷に入って心臓の鼓動が速くなることは正常な生体反応です。ですが、お化け屋敷が終わってもずっと続く動悸はホメオスタシスの破綻です。それは正常に戻す必要があります。
何が言いたいかというと、普段の生活で疲労やストレスがゼロになることは基本的にあり得ません。
その疲労やストレスの波の揺らぎの中で人は生きているのですが、その中には正常な生体反応として症状が出てくることもあると思います。「上司に叱責されたら動悸がした」「夜遅くまでPC作業をしていたら寝つきが悪かった」などは、なるべくしてなっている正常な生体反応です。
それは健康な人でも起こる症状です。しかし、その後「1週間動悸が治まらない」「2週間眠れない」となるとホメオスタシスが破綻し、問題です。であれば施術をし、元の状態に戻すという事が必要になります。
その様な正常な生体反応の揺らぎの中で人は生きていますので、それらを全て無くすのは不可能です。「どんな事が起きても動悸が起きない身体にする」という事は不可能ですし、それは生物学的に正常なヒトの姿とはいえません。喜怒哀楽があり、それにより体が反応するというのは健康な状態です。
とは言っても、過度な症状の波があると不調としてストレスを感じ、生きにくいですので、症状を抑えて生活しやすいようにしていく事が必要です。
なぜ不調を忘れる事を目指すのか
「不調を感じる→不調について考える→不安になりストレスを感じる→そのストレスで不調が出る」というように不調について考えることが起これば「また症状出ないかな…」「大丈夫かな…」と不安になり、それがストレスで心身が緊張し、また症状が出てくるという負のスパイラルが起こります。
それは、記憶を司る海馬が委縮し、不安などの情動を司る偏桃体が興奮している状態です。
そうなると海馬が機能しなくなるので、不調に関しての不安な事しか考えられなくなり、新しい、他の記憶が蓄積されません。不安な時に違う事を考えようとしても、不安な事ばかり考えてしまうのは、このようなメカニズムからです。つまり、不調(不安)について考えることはどんなに体が健康になったとしても、ストレスになりうる事なのです。なので、不調に変化が出て、偏桃体の興奮が落ち着き、海馬が機能を取り戻すと、新しい記憶が記憶できるようになり、症状についての記憶が薄れていくという現象が起こります。最終的に「言われてみたら症状が出ていない」という状態になったら正常な身体に戻ったと判断して良いと考えます。
よって、異痛症・アロディニアが広義の意味で治ったと判断する基準は「症状について忘れていた」という事が起きたらという事になります。
当院での異痛症・アロディニアの改善例
当院の施術は根本的に改善していく事が可能
当院では「身体的なストレス」と「心理的なストレス」両方からアプローチしていきます。
自律神経と痛みに特化した鍼灸整体院として豊富な知識と技術を兼ね備えており、病院やマッサージ、整体など、どこに行っても治らない不調を抱えている人が全国各地から数多くご来院し、改善しております。
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